認知症とは?
認知症とは、様々な原因によって脳の細胞が損傷を受けたり、機能が低下したりすることで、記憶、思考、判断力などの認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす状態を指します。以前は「痴呆症」という言葉が使われていましたが、これは差別的な響きを持つという理由から、2004年に厚生労働省により「認知症」へと名称が変更されました。認知症は単なる「もの忘れ」とは異なり、新しい情報を記憶できない、過去の出来事を思い出せない、時間や場所がわからなくなるなど、より広範な認知機能の障害が特徴です。
認知症の4つの主な種類と特徴
認知症にはいくつかのタイプがあり、それぞれ発症の仕方や症状の現れ方に違いがあります。
アルツハイマー病
アルツハイマー病は、認知症の中で最も多いタイプで、脳の中にアミロイドβやタウといった異常なたんぱく質が蓄積することで、神経細胞が破壊される病気です。
中核症状
記憶障害(特に新しいことを覚えられない)、見当識障害(時間や場所がわからなくなる)、判断力低下、計画性の低下などが挙げられます。
進行の特徴
徐々に進行し、最初はもの忘れが中心ですが、次第に言葉の理解や使用が難しくなったり、着替えや食事などの日常生活動作に支障が出たりするようになります。
血管性認知症
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって、脳の血流が悪くなり、神経細胞に酸素や栄養が届かなくなることで発症する認知症です。
原因
脳卒中、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が主な原因となります。
発症リスク
脳血管障害の既往がある方、生活習慣病を治療せずに放置している方にリスクが高いとされています。症状が階段状に悪化したり、感情の起伏が激しくなったりすることが特徴です。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、脳の神経細胞内に「レビー小体」という異常なたんぱく質が蓄積することで発症します。
特徴
記憶障害だけでなく、幻視(実際にはないものが見える)、パーキンソン症状(手足の震え、体のこわばり、歩行障害)、注意力や覚醒度の変動などが現れることがあります。
パーキンソン病との関係
レビー小体型認知症とパーキンソン病は、同じレビー小体という異常なたんぱく質が関係しており、発症時期や主な症状の現れ方に違いはありますが、密接に関連しています。パーキンソン病患者の約半数が認知症を発症するとも言われています。
若年性認知症
若年性認知症は、65歳未満で発症する認知症の総称です。
加齢等による認知症との違い
高齢者認知症に比べて、社会生活の中での発症が多く、仕事や家庭への影響が大きい点が特徴です。進行が速いタイプや、うつ病と間違われやすいケースもあります。
特徴
アルツハイマー病、血管性認知症、前頭側頭型認知症(行動や人格の変化が顕著)など、様々な原因で発症します。
認知症の原因と発症リスク因子
認知症は単一の原因で発症することは少なく、複数の要因が絡み合って進行していきます。
加齢は最大のリスク因子ですが、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病、喫煙、運動不足も発症リスクを高めます。また、家族に認知症の既往がある場合、遺伝的な影響も考慮されます。
発症・進行を早める危険因子と予防のポイント
発症や進行を早める危険因子として、以下の点が挙げられます。
不健康な生活習慣
喫煙、過度の飲酒、運動不足、偏った食生活は認知症の発症や進行の可能性を高めます。
精神的ストレスの蓄積
長期にわたるストレスは、脳の機能に悪影響を与える可能性があります。
社会的孤立
人との交流が少ないと、脳への刺激が減り、認知機能の低下を招きやすくなります。
難聴や精神的ストレスとの関係
近年、難聴や慢性的な精神的ストレスが認知症のリスクを高める可能性が指摘されています。
難聴により、会話や情報が入ってこなくなり、脳への刺激が減少することや、社会からの孤立を招くことが認知機能低下につながると考えられています。補聴器の使用などで聴覚を改善することが、認知症リスク低減につながる可能性が示唆されています。
長期にわたるストレスは、脳の海馬(記憶に関わる部位)に影響を与え、認知機能の低下を招く可能性があります。ストレス管理やリラックスする時間を持つことが重要です。
認知症の症状|初期症状から重度までの段階別チェック
認知症は段階的に症状が変化していきます。その変化に気づくことが、早期発見・治療への第一歩となります。
初期症状(もの忘れ、判断力の低下、見当識障害)
最近の出来事を忘れたり、約束を何度も確認したりすることが増えると要注意です。また、今が何年何月か、自分がどこにいるのか分からなくなる「見当識障害」も初期に現れることがあります。
中核症状・周辺症状の違いと主な行動
中核症状とは脳の変化に直接起因するもので、記憶障害や言語障害、理解力の低下などが該当します。周辺症状はそれに伴って現れる行動や心理的な変化(興奮、不安、徘徊など)で、本人の環境や性格によっても変わります。
進行段階と身体・精神・行動の変化
中等度以降になると、入浴や排泄、食事などの生活動作にも支障が出てきます。言葉のやりとりが困難になり、無表情になったり、感情のコントロールができなくなることもあります。
徘徊や妄想、興奮など対応が困難な症状
特に家族を悩ませるのが、夜間の徘徊、被害妄想、急な興奮・暴言といった行動です。これらには医学的な対応と、環境調整、介護者のサポートが不可欠です。
抑うつ・不安・抑制など精神症状への理解
本人は自分の変化に不安を抱いていることが多く、抑うつや無気力、不眠などが見られることもあります。症状の裏にある気持ちを理解し、寄り添う姿勢が求められます。
認知症の診断・検査|早期発見の重要性
認知症の早期診断が重要な理由
本人とご家族のためにも、認知症の早期診断は非常に重要です。
適切な治療・ケアの開始
早期に診断を受けることで、症状の進行を遅らせる薬や、行動・心理症状への対処など、適切な治療やケアを早期に開始できます。
生活環境の準備
今後の生活や介護について、本人とご家族が十分に話し合い、準備を進める時間が持てます。
社会資源の活用
介護保険サービスや地域の支援制度など、利用できる社会資源についての情報を得て、活用することができます。
MCI(軽度認知障害)段階での介入
認知症の前段階であるMCIの段階で発見できれば、認知症への移行を遅らせるための介入が可能です。
治療可能な認知症の発見
正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症など、治療によって改善が見込める認知症もあります。早期診断により、これらを見逃さずに治療に繋げられます。
診断・検査方法(MCI・軽度認知障害との違い)
診断では問診、認知機能検査(MMSEなど)、血液検査、MRIなどが行われます。MCI(軽度認知障害)は、日常生活に支障はないが将来認知症に進行する可能性がある状態です。この段階での対応がとても重要です。
認知症疑い時の受診フロー
1.相談・予約:もの忘れや認知症が疑われる症状があれば、まずは当クリニックの認知症外来にご相談ください。電話またはウェブサイトからご予約いただけます。ご家族の方からのご相談も歓迎いたします。
2.問診:来院後、医師や看護師が症状や生活状況について詳しくお伺いします。ご家族の情報も診断に役立つため、ご家族にも同席していただくことを推奨します。
3.各種検査:神経心理検査、血液検査、頭部MRIなどの画像検査を行います。
神経心理検査では、テストを行うことで記憶力・注意力・言語能力・判断力などを総合的に評価します。
4.診断と説明:検査結果に基づき、医師が診断名と今後の見通しをご説明します。認知症の種類や進行度合い、治療方針について丁寧にご説明し、ご家族からの質問にもお答えします。
5.治療・ケア計画の立案:診断結果に基づき、薬物療法、非薬物療法、介護サービス導入の検討など、個別に応じた治療・ケア計画を提案します。必要に応じて、地域の介護支援専門員(ケアマネジャー)との連携も行います。
6.定期的な経過観察:症状の変化や治療効果を確認するため、定期的に受診していただきます。
認知症のご相談は盛岡市のくわた脳神経外科クリニック
当クリニックでは、認知症の診療に力を入れており、専門的な検査と丁寧な説明を通じて、ご本人とご家族の不安に寄り添います。
初診ではじっくりとお話を伺い、神経心理検査や画像検査を組み合わせて総合的に診断を行います。ご本人の状態に応じた治療や支援方法をご提案します。