近年、医療分野におけるAI(人工知能)の進化が目覚ましく、多くの診療科でその活用が進められています。脳神経外科においても例外ではなく、画像診断支援や手術計画、患者データの解析など、さまざまな分野でAI技術が注目されています。
たとえば、MRIやCT画像の読影においてAIは膨大なデータから学習し、微細な病変や変化を素早く検出する能力を持ちつつあります。AIは過去の数万件に及ぶ画像と比較しながら、医師が見落とす可能性のあるごく小さな異常にも目を向けることができるため、診断の精度向上に寄与する可能性があると期待されています。
また、てんかん手術や脳腫瘍摘出といった高度な脳外科手術においても、AIは術前のシミュレーションや最適な手術ルートの提案などを通じて、医師の意思決定をサポートする研究が進んでいます。さらに、患者さまの生活習慣や既往歴、検査データなどをAIが統合的に解析し、リスク評価を行うような取り組みも試みられています。
しかしながら、AIの精度はあくまで“過去のデータに基づく予測”であり、すべての患者さまに最適な答えを出すわけではありません。AIが提案する結果は、あくまで参考意見のひとつであり、最終的な診断と治療方針の決定は、医師の経験と直感、そして患者さまとの対話を通じて行うべきものであると私は考えています。
盛岡市のくわた脳神経外科クリニックでは、現時点ではAIを診療に直接活用しておりません。その理由は、「患者さまお一人おひとりに寄り添った、きめ細やかな診療」が最も大切だと考えているからです。私たちは、患者さまのわずかな表情の変化や話し方、訴え方といった“数字には表れない情報”を重視し、それを診療の判断材料としています。
AIは非常に優れた道具であり、将来的には当院でも一定の範囲で導入を検討する可能性はあります。しかし、それは決して「AI任せの診療」ではなく、専門医の判断を補完し、より的確で迅速な対応を可能にするための手段としての活用です。
医療の本質は「人と人との信頼関係」にあります。診療において最も大切なことは、患者さまの不安や疑問に丁寧に耳を傾け、一人ひとりの背景や生活を考慮したうえで、最適な医療を提供することです。AIがどれだけ進化しても、この姿勢は決して変わることはありません。

これからも、盛岡市のくわた脳神経外科クリニックでは、最新技術の動向に目を配りつつ、患者さまに安心してご来院いただけるよう努めてまいります。どんなに時代が進化しても、「信頼される人の目と手による診療」が私たちの基本姿勢であることに変わりはありません。
AIの時代にあっても、人のぬくもりと安心を忘れずに。くわた脳神経外科クリニックは、これからもその想いを大切に歩んでまいります。
盛岡市のくわた脳神経外科クリニック
院長 桑田知之
- 日本脳神経外科学会専門医
- 日本脳卒中学会専門医
- 日本医師会認定産業医
- 日本医師会認定健康スポーツ医